文月二十四日。東北地方の稲穂も、こうべを垂れ始めました。

yatsugatake2005-08-28

宿に荷物を預けて、バスの発車時刻まで花巻の街中を散歩しました。
日曜日なので見かける人も少なく、部活練習に出かける女高生でしょう。長い弓を携え、自転車で通り抜けて行くのが珍しい光景でした。
城下町らしい佇まいも感じられました。
高い石垣からはノブドウの実が垂れ下がり、ヒルガオの花も行く夏を惜しんでいるかのように、ピンクの花開いていました。
軒先に見えたハナトラノオの茎先に、小さな白い蝶が翅を半開きにして休んでいます。体を温めているのでしょう。近づいて見ると、なんとモンシロチョウです。白い翅に、黒い紋が二つ。
うちの周りで見かけるのはすべてスジグロシロチョウ(条黒白蝶)にとって替わられています。本物のモンシロチョウに久しぶりに出会えて、感動しました。
バーの駐車場脇に、ピンクの可愛い花が数個咲いているのが見えました。自然に生えたのか誰かが植えたのか、株は踏みしだかれていました。見ると、興味のある植物の一つ、ナデシコ科、キャンピオン・シレネの仲間のようです。一層、愛おしく感じられました。
セミナー二日目は、童話、「風の又三郎」が作られる過程に関わる「草稿と風土」でした。
別の作品「風野又三郎」「さいかち淵」「種山ヶ原」などが、どのように組み込まれたか、それらの謎の読み解きです。作者の賢治による書き込み・推敲、の経緯など、研究している皆さんの解釈・洞察はさすがに興味深いものでした。「風の三郎」という、風の精霊が地域に伝承されていて、ファンタジックな面白さなど、示唆に富むものでした。
実際の自然現象・地名と、作中のそれらとは必ずしも一致しないのは当然、いろいろ勉強になりました。
午後は、賢治設計の「南斜花壇」を再現した花壇をじっくり観賞しました。じりじりと夏の日が照りつけ、ミンミンやツクツクホウシが合唱していました。垂直に立った柱の影が、正確に1時半を示していてびっくりしました。
記念館では、ずいぶん時間をかけて見学しました。企画展示の「税務署長の冒険」が、実に面白かったです。改めて読んでみたいです。博物館は二度目なので、ざっと見て回りました。
新花巻まで、とうとう歩いてしまいました。稲穂が黄色みを増して頭を垂れ始めています。今年の稲作は、問題なさそうです。
車窓から、朱色〜紅色と千変万化するすばらしい夕焼けを、存分に楽しみました。