「冬型」が緩んで、穏やかな日でした。

しばらく前のこと、、「矢島の凍豆腐が、スーパーのチラシに、見つけました。
この凍み豆腐が、スーパーで売られることは、珍しいことです。
子どもの頃、生産者が自転車につけて売りに来たことが、懐かしく思い出されました。

画像、早速出かけて求めました。
これは、スーパーとの契約生産の品物で、10枚のパック詰めです。
ラベルに「天然凍結」と記載があります。生豆腐を凍らせたままで、カチカチに凍っています。市販の「高野豆腐」と違い乾燥していません。
「矢島」は、17年から佐久市になった集落名です。冬期間、農家の副業として家内生産される伝統食品といえます。
雪も少なく冷え込みが厳しいからこそ、生まれた貴重な食品です。
子どもの頃から馴染みの物は、藁で編んで「連」にした物でした。
戦後の食糧難時代にはじまり、なくてはならないありがたい「凍み豆腐」なのです。
佐久に疎開した詩人、佐藤春夫は、「凍み豆腐」という詩を作っています。
中澤弘之:『佐久における 佐藤春夫とその周辺』を、一部引用します。
佐久の凍み豆腐といえば、浅科の矢島産か御代田の馬瀬口産。家々の軒先につるされた幾連もの凍み豆腐。その風情は今は見られない。何かしら物淋しい。
春夫は凍み豆腐を大変好んだようである。その証拠にか、この詩集の中に三つも入っていて、切々と身を語っている。

凍み豆腐 ー京大阪にては高野豆腐と呼ぶものなりー
赤々と夕日さしそひ わびしさを誰にか云はん しみ豆腐軒端にほとび 雪解にも似たる滴瀝(したたり)
ー軒端にさらし干すこと数日ー
日がな一日ぽたほたと 涙つぽさの凍み豆腐 國の恨みか身の憂さか 見ればつくづく身に染みて


ラベルの裏に、特徴と保存・料理法が載っていました。
凍結したままを切って、下仁田ネギとブナシメジとともに、味噌汁の具にしました。
熱々をいただくと、子どもの頃の「お袋の味」…そのものです。
やわらかくなめらかで独特の風味が蘇り…、ふっと子ども時代に戻りました。
雪かきをしたあとの体が、芯から温まりました。